OSJおんたけウルトラトレイル100km その2

※コース図はこちら

深夜0時スタート2

舗装路を3kmほどゆっくりと進み、林道へ。毎度のことだけど、この辺は全然記憶に無い。ただモチベーションだけは非常に高かったのを覚えている。ライトはハンドライトも持参したけど、このレースでは無くても行ける。下りの一部以外はBlack Diamondのikonだけで十分。ただ下りはT-REXをもっていったおかげで凄まじく明るく、これだけでだいぶスピードが違う。日中走ってるスピードに近いスピードでいけたので、個人的にはハンドライトも局面に応じて使用してたので、役に立った。

今回は夜も昼も天気が良かった。そのおかげで、前回は感じられなかったけど、このレースは前方後方遠くを走る選手が見えることが判明。沢をぐるっとまいていくコースを走ってたりすると、沢の反対側にライトが点々と林道沿いに光っているのが見え、スケールの大きさを感じる。前を見ても同じで、ああ、あそこまでいくんだなーというのがわかって面白かった。

当初目標では、アベレージでキロ8分を切るくらいを想定(105km=14時間想定)。前半はまだ脚が残ってることもあり、最初の小エイド(27km)までは登りもゆっくりで走り続け、キロ6分くらいでキープ。そこからがつんと登る。ここは最初ゆっくりと走り続けるが、途中で早歩きに切り替え。この辺りで、既に腸腰筋辺りに若干違和感を覚え始める。

前回は終盤にかけて左の膝を痛めてしまい全然走れなかったので、今回はしっかりと膝にテーピングをしてきた。しかしテーピングをして走ること自体、実質今回が初めてだったので、若干きつくやりすぎた。結果として膝が固まってしまい、膝自体は痛くなることは無かったのだけど、従来膝で吸収してた衝撃をすべて他の場所、つまり今回で言えばこの腿の付け根の股関節周りと大腿四頭筋で受けてしまい、過度な負担がかかってしまったようだった。この違和感が20km過ぎから既に出てしまい、若干不安を感じつつもまだ動く状況ではあったので、下りは無理せず、登りはしっかりと進み続ける。上りでもこの股関節周りは使っていたようで、ジワジワと疲労感はたまっていた。

登りは小股でピッチを刻み、膝固定のおかげでふくらはぎを使わずに大腿部の筋肉を使って登れた。下りは周囲のペースと変わらなくても、登りで徐々に順位を上げる。別に急いでいたわけではなかったけど、結果的に前に出て行くことになる。

第一関門手前辺りで空が明るくなり始める。
まだ04:30だが、山の朝は早い。

湖の上には朝靄がかかり、山々に朝日が当たって幻想的な風景が広がり始める。

第一関門には5時前に到着。昨年より30分近く早い。水を補給してすぐに出る。ここからは長い下り。
徐々に周囲が明るくなる景色を楽しみながら、途中でヘッドランプをしまう。52km地点の小エイドで水を飲んで先に進む。確かまだ6時台だった。ここから湖畔沿いをいくフラットなコース。

昨年もここで発生したのだが、今回もここに来て便意が。今回改めて認識したが、どうも自分の体内時計は正確にできていて、決まってこの時間帯に便意をもよおすようになっているらしい。
今回はそうなることも予想されていたので、きちんと準備をしてきておいて良かった。さらっとすまし、前へ進む。既にこの辺りで脚はだいぶ重い。もう少し脚に疲労を感じさせずに中盤、終盤へ持っていかなければならない。しかしどうしたらいいのかは、未だによく分からず。試行錯誤の中で見つけていくしかない。

気持ちのよい湖畔沿いのルートを行くと、前半の山場。小ピークを何度か重ねながら300mアップ。だらだらっとした登りなので、300mアップといっても10km位かけて上がっていく。登りは歩いてるのだが、ペースが周りよりも速いので追い抜いていく。下りもまだ多少は走れるけど、徐々にきつくなってきて、抜かれる回数の方が増えてくる。

まだ中盤なのに、下半身が動かない。ふくらはぎや腿の裏側は何の不調もない。ここで思い切って、前半用に残っていたべスパ1個を一気に接種。アミノバイタルもあわせて飲んで着火。足が軽くなるというわけではないのだが、特に下りで脚が前に出るというか、どこかの神経回路にバイパスがかかって脳の指令が行き届くようになり、集中力が増すような状況に至る。これで30分程度は持ち、その後もshotzでだましだましに前へ進む。

登りは体を前傾させて、重心を前に倒しこむことで推進力に変えていていたが、脚が前に出ないような局面ではこの方法は下りでも有効。重心を前にずらすことで脚は推進力の機能は不要になり、その瞬間瞬間でバランスを取ったり、安定を確保するだけでいい。

09:00前に第2関門の70km地点に到着。腰はおろさず、水を補給して、いなりずしを食べ、サロンパスを腿の付け根に噴射し、ストレッチをして進む。この時点で昨年より1時間早いペース。もしかしたらいけるかもしれない。昨年はこの後膝をやられて走れなかった。今回も下半身がやられてるけど、走れなくは無い。

ここから第3関門までの15kmがきつい。あと少し、と言うわけでもなく、ただ終盤には差し掛かっているので肉体的にも相当きてる。もう各選手は各選手のペースで、抜こうが抜かれようが全く関係なし。自分も登りで抜いて、下りで抜かれての繰り返し。登りで多少がんばれたのが全体的なペースダウンにつながらなかった大きな要因だと思う。100mアップダウンを2回繰り返して400mダウン。この長い下りは苦しい。べスパを使いたいが、残り2袋。1袋は終盤最後の長い下り用に取っておきたいので、ここでは1袋を何回かに分けて接種。さすがに効果は落ちるが、なんとか動くきっかけを探り、うまくはまった場合にはshotzを追加で投入。

この区間は景色も良く、天然エイドも豊富にあって、時折水で顔を洗ってリフレッシュしたり、冷たい水でのどを潤したりして、前へ進む。沢を挟んだ反対側の斜面を登ったり下ったりしてる選手が見えたり、夜とは違ったスケールのでかさを感じられる。昨年と比べ今回は気温も高く暑かったが、個人的には景色も楽しめたおかげで走るモチベーションも持続できたので、このくらい晴れてくれてよかった。

第3関門ではそうめんを2杯頂き、冷えたトマトを食べ、水はまだ1L残っていたので補給せずに、先を急ぐ。ようやく残り20km。ここまできてもあと20kmか、という気持ちになりながら、200mアップダウンを二回繰り返して長い500mダウンの下りへ。エイドでほとんど止まらなかった(今回はスタートしてから一度も腰は下ろさなかった)ので、エイドで一気十数人に抜き、その後の区間で抜かれたりというケースが多かったような気がする。それでもエイドでの滞在時間を短くすることでだいぶ順位を上げたと思う。

後半にかけては、見るからにランナーって感じの人や、トライアスリートっぽい人、とにかく黒く日焼けしてたり、カモシカのような脚をしてたり、ノースリーブなのに白いところが無い女性であったり、そんな人々に抜かれた。きっと初めての100kmとかで前半セーブしてたのか、あるいは夜間はなれないので遅かったのか、いずれにしても、よくこの局面までいたって進むなーと関心。
自分も含め前後の選手は登りでもいけそうなところは小走り、平地や下りも走り続けていた。ほんの数メートルのフラットな区間でも少しで前へという気持ちからか、その1歩、2歩を走ろうとする。速さを求めるというか、多分自分のペースを管理するための小走りなんだろう。

最後の下りを前に、見覚えのある風景が飛び込んでくる。ちょうど昨年、写真を撮ったところだった。ここが最後の長い下りのスタート地点だったとは。深呼吸をして、べスパを一気に頂く。amino vitalも胃が嫌がっていたけどとにかく入れ、着火。さすがにこれで一気に回復というわけにはいかないけど、それでもまったく動かなくなっていた足に脳の指令が行き届く程度には、一時的に回復。その勢いで何とか下り続けるも、95KM地点(残り10km)でその効き目も終了。あと5kmはくだりが続くと思いながら、ストレッチしながらどうしたものかと考えてるとき、「そういえば、膝のテーピング外したらいいんじゃないか?」と思いつく。

膝がガチガチに固められていたので、屈伸もできず大腿四頭筋のストレッチさえもできない状態だった。幸いにも膝は全然痛くないし、下りも残り5kmなら膝に何かが起きることは無いだろうとおもい、c3fitを脱いでベリベリっとテーピングを外した。このときの屈伸をほど気持ちのよい屈伸はなかったー。屈伸運動がここまで気持ちのよいことだとは!!

テーピングを外したことで、普段のランニングに近いフォームを取り戻す。当然痛いところは痛いままなんだけど、良く原理がわからないが、膝の可動域が広がったところで下りの衝撃吸収を他の筋肉に分散させることができたんだと思う。走れる喜びと、残りあとわずかであること、目標の14時間きりは少々厳しいかなと思いつつも、モチベーションは上がり、とにかく駆け抜けた。ここで何人か抜く。

山を下りきって里に戻ってきた。大体13:20過ぎくらい。
エイドのおじさんに残り6kmといわれる。
キロ6分ペースなら14時間切りいけるかもしれない。

まあ、たとえ14時間切れなくても早いほうがいいわけだし、息が苦しいわけでもないから走れるし、歩いたって楽になるわけでもないから、と思って走り始める。自分より前を走ってる人なんかは、ここ走りきれば14時間切れるのに、歩いてる人が目立った。下りであれだけ走って抜いてったんだから膝が悪いとは思えない。確かにこの最後に長い平坦な6kmは精神的にきついと思うが。

この区間では100km表示があるのみで、残り区間の距離表示が無い。これはせめて欲しかった。あと何キロでゴールかわからないので、かなりつらい。しかしそんな中、一つサプライズプレゼントが待っていた。

長いロード区間
遠くに少年が一人たっている。道の前の家に住んでる少年のようだたが、なんと私設エイドを一人で展開していた!!
冷やした水をペットボトルに汲んで渡してくれる。「がんばってください!」といわれる。これは本当にうまく、思わず叫んでしまう。そして生き返ったー。ありがとうー、少年!!
たまたま前後に自分以外いなかったけど、あそこもう少し人が殺到してたら大変だろうなー、というかあの後してたんだろうな。


その後もいつ終わるとも知れないロードが続く。自分は去年やってるからなんとなく見覚えのある風景が出てきたりしてるが、これ初めての人には地獄だろうな、とか思いながらも前へ進む。
何度もめげそうになり、さっきの小エイドから6kmって本当か?とか、14時間切りは無理じゃないか、と色々と足を止める口実を探し出してしまう。ただ、今回はこのレースに至るまで、中国のレースやサロモンX-Adventure、他にもエクストリームやARJS等いろんなアドベンチャーレースの大会参加を通じて、多くのものを得てきていた。直接的にこのレースのためのトレーニングであったというわけではないけれども、そうして一緒にやってきた友人たちにも応援してもらい、そんなこととかを考えてたら、別に誰かが見てるわけでも無いんだけど、足を止めるわけにはいかなかった。
このレースは個人で参加している競技ではあるが、なんとなくそういつながりのようなものに支えられたレースでもあった。


ただ、さすがに最後の最後で舗装路の登りを突きつけられて、正直なところ、あきらめかけた。このピーク越えて何も見えなかったら歩こうと。
しかしレースはうまい具合にできてて、これを越えたところでようやくゴールの公園に向う橋が見えた!!

この橋、両側にスポンサーの旗が並び、いよいよ戻ってきたんだなー、という実感がぐっとわきあがってくる。
橋の手前で13:48。「すっごいがんばれば14時間切り!」と声かけられ、そうかー、まだ結構あるのかー、と思った。
ただ自分の頭の中で距離を思いだしてみると、「すっごい」がんばらなくてもこのペースでいけばいけるんじゃないか、と橋を渡りながら確信。
最後の公園へ向う上り坂も走りぬけ、公園内のゴールに向けて走る。


ゴール会場は表彰式直前。走り終わった選手に応援され、「14時間切れるよー」と声もかけられ、何とかゴール。



今回も色々とあった長い戦いでしたが、何とか無事完走。
昨年よりも1時間タイムを縮められたのが何よりうれしかった。

そして、多くの仲間に支えられたレースでした。人の応援がここまで自分の力になるんだ、と初めて実感しました。この場を借りてお礼します。ありがとう!

        • -


終了後は第2関門に預けてた荷物が戻ってくるのを待ちながら、芝生でストレッチしてたら寝てた。
その後駐車スペースの周囲の人と話をしながら、一足先に会場を出る。

とにかく早く帰ろうと思い、帰りながら、途中のコンビニで仮眠のつもりが1時間寝てしまう。結局レンタカー屋の営業時間に返却が間に合わないことがわかり、どうせならと近くにあったスパで風呂に入って、飯食って、寝る。おきたら20:30。そこからゆっくりと帰り、荷物を片付けて、コインパーキングに車をとめて、23時過ぎには就寝。